司ゴム電材株式会社 TSUKASA RUBBER&ELECTRIC MATERIALS CO.,LTD.

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2026.06.01 技術情報 コラム

粉体塗装(パウダーコーティング)とは?焼付塗装との違いやメリット・デメリットを解説

近年、環境対応への意識の高まりや製品品質向上の観点から、従来の液体塗装に代わる選択肢として「粉体塗装」が注目を集めています。しかし、実際に工法を切り替える、あるいは新規採用するにあたっては、「従来の液体焼付塗装と具体的に何が違うのか」「自社の製品に本当に適しているのか」「コストや品質面での実際のメリット・デメリットは何か」といった選定上の課題が生じます。

本記事では、ゴム・樹脂・金属加工や各種塗装を手掛ける司ゴム電材が、粉体塗装の仕組みから、メリット・デメリットを解説いたします。

粉体塗装(パウダーコーティング)とは

粉体塗装の基本概念と仕組み

粉体塗装とは、水や有機溶剤(シンナーなどの溶媒)をほとんど使用せず、細かい粉末状の塗料を静電気の力で被塗物に付着させ、加熱・溶融・硬化させることで塗膜を形成する塗装技術です。英語では「Powder Coating(パウダーコーティング)」と呼ばれ、環境性能と塗膜の堅牢性を両立する塗装工法として世界中の製造現場で広く採用されています。

一般的な塗装方法(工法)としては、「静電粉体塗装法」が用いられます。静電気を帯びさせた粉末塗料を、アースを取った被塗物(主に金属)に吹き付けることで、静電気の力で粉を付着させます。実際の製造ラインにおける主な工程は以下の通りです。


静電粉体塗装法の工程図

出典:粉体塗装の紹介 静電粉体塗装法(日本パウダーコーティング協働組合)




粉体塗装の主な用途

優れた耐久性と防錆性を持つため、過酷な環境で使用される製品や、長期的な美観の維持が求められる金属製品に広く用いられています。


  • 自動車・バイク部品

    ホイールや足回り部品など
  • 建材・エクステリア

    フェンス、アルミサッシなど

代表的な用途としては、自動車・バイクの部品(ホイールや足回り)、家電製品の金属製外装・構造部品(エアコン室外機の外装カバー、洗濯機のキャビネットなど)、スチール家具、建材やエクステリア(フェンス、アルミサッシ)、配電盤、産業機械などが挙げられます。




当社における粉体塗装の対応事例

当社、司ゴム電材においても、上述したような優れた耐久性や美観が求められる様々な金属製品への粉体塗装を承っております。具体的には、当社の強みである「精密板金加工から各種塗装までの一貫生産体制」を活かし、以下のような製品・部品への塗装に対応しています。


  • 産業用機器の筐体・カバー類・配電盤など

  • 各種金属ステー・フレーム・ブラケット類



上記は代表的な対応例です。当社の強みは、塗装工程のみのご依頼に留まらず、精密板金加工から各種塗装までの一貫生産体制を構築している点にあります。

お客様の製品の材質(鉄・アルミなど)や形状、ロット数に合わせた最適な塗装仕様のご提案はもちろん、板金加工の段階から塗装時の仕上がりを見据えたトータルでの品質・納期・コストの最適化が可能です。
「板金加工から塗装までまとめて委託して管理工数を減らしたい」「自社製品の形状に粉体塗装が適用できるか知りたい」といったご要望がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。




粉体塗装と液体焼付塗装との違い

粉体塗装をご検討中のお客様から、よくいただくご質問の一つに「一般的な焼付塗装とは何が違うのか?」というものがあります。

粉体塗装も焼付塗装も、金属製品などに用いられる工業塗装です。どちらも塗装後に加熱して塗膜を形成・硬化させる点では共通しているため、違いが分かりにくいと感じる方も少なくありません。

工業塗装における『焼付塗装』とは、加熱硬化させる工法全般を指すため、厳密には粉体塗装も焼付塗装の一種です。

しかし、製造現場の慣例では『焼付塗装=液体(溶剤)塗料を用いた焼付』を指すことが多いため、本記事では便宜上『粉体塗装』と『液体焼付塗装(溶剤焼付塗装)』という呼称で比較・解説します。主な違いは以下の表をご確認ください。


比較項目 粉体塗装 液体焼付塗装(溶剤焼付塗装)
塗料の形態 粉末状の塗料を使用 液体塗料を使用
環境面 有機溶剤を基本的に使用せず、VOC排出を抑えやすい 有機溶剤を含むため、VOCや作業環境への配慮が必要
塗膜の特徴 厚膜にしやすく、耐久性・耐食性を高めやすい 薄膜でなめらかな仕上がりにしやすい
仕上がり・意匠性 厚みのある仕上がり。細かな色調整や薄膜仕上げは条件による 色・ツヤ・質感の調整がしやすい
向いている用途 耐久性・耐食性・環境配慮を重視する金属製品 美観・色味・薄膜仕上げを重視する金属製品
注意点・確認事項 素材・部品の耐熱性、膜厚、色替え条件などの確認が必要 有機溶剤の管理、乾燥・焼付条件、塗膜性能の確認が必要

※塗膜の厚み、焼付温度、仕上がり、耐久性・耐食性は、使用する塗料の種類、被塗物の材質・形状、前処理、塗装設備、要求される品質規格によって異なります。表中の内容は一般的な傾向を示したものです。




このように、粉体塗装と液体焼付塗装は、どちらも主に金属製品などに用いられる工業塗装ですが、塗料の形態や環境面、塗膜の特徴、仕上がりに違いがあります。粉体塗装は、環境対応や耐久性を重視したい場合に有効な選択肢ですが、製品の材質や形状、求める外観品質によっては、溶剤焼付塗装の方が適している場合もあります。そのため、塗装方法を選ぶ際は「どちらが優れているか」ではなく、製品の用途や使用環境、求める品質に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。

次章では、粉体塗装のメリット・デメリットについて、さらに詳しく解説します。





粉体塗装のメリット・デメリット

粉体塗装は、環境対応や塗膜性能の面で多くのメリットがある塗装方法です。一方で、すべての製品に適しているわけではなく、素材・形状・ロット数・求める仕上がりによっては、溶剤焼付塗装の方が適しているケースもあります。
自社製品に合った塗装方法を選ぶためにも、メリットと注意点をあわせて確認しておきましょう。





粉体塗装のメリット

①有機溶剤を使用せず、VOC対策につながる

VOC(揮発性有機化合物)とは、シンナーなどの有機溶剤に含まれる成分のことです。大気中に放出されると、光化学スモッグやPM2.5といった大気汚染の原因になるほか、人体への健康被害も懸念されています。そのため、近年は国や自治体によって排出量の削減が強く求められており、環境に配慮した塗料への移行が進んでいます。



参考:揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制VOC排出抑制の手引き(PDF)[環境省]



粉体塗装は、粉末状の塗料を使用するため、一般的な溶剤塗装のように有機溶剤を基本的に使用しません。そのため、VOC、いわゆる揮発性有機化合物の排出を抑えやすく、環境負荷の低減につながる塗装方法として注目されています。
塗料の種類ごとのVOC排出量については、以下の画像をご確認ください。



塗料の種類ごとのVOC排出量

出典:低VOC(代替)塗料の使用[環境省]

【用語解説】図表内の塗料分類について
粉体系:水や有機溶剤を含まない100%固形分の粉末塗料。
水系:水を主な溶媒・分散媒として使用する塗料。
ノンソル系:有機溶剤を使用しない、または揮発する溶剤分をほとんど含まない塗料。
ハイソリッド系:従来の溶剤系に比べて有機溶剤を減らし、固形分の割合を高めた塗料。
溶剤系:シンナーなどの有機溶剤を溶媒・希釈剤として使用する塗料。




②厚みのある強い塗膜を形成しやすい

粉体塗装による完成塗膜は、塗料に使用される高分子樹脂の特性により高膜厚で優れた塗膜強度、化学薬品性、耐食性、耐候性を保持しています。



③塗料ロスを抑えやすい

粉体塗装では、製品に付着しなかった粉末塗料を回収し、条件によっては再利用することができます。オーバーミスト(対象物に付着しなかった塗料)を資源として再び活用できるため、塗料ロスを最小限に抑え、環境への負荷を低減することにつながります。



④工程短縮につながる場合がある

粉体塗装は、製品形状や要求膜厚にもよりますが、一回の吹き付けと焼付工程で厚みのある塗膜を形成しやすい塗装方法です。
溶剤塗装で厚膜を形成しようとすると、塗装と乾燥を複数回繰り返す必要がある場合があります。粉体塗装では、条件が合えば工程を短縮でき、生産性の向上につながることがあります。





粉体塗装のデメリット・注意点

①高温での焼付が必要なため、素材や部品の耐熱性に注意が必要

粉体塗装では、塗装後に加熱し、粉体塗料を溶融・硬化させて塗膜を形成します。そのため、被塗物には一定の耐熱性が求められます。一般的には、鉄やアルミなどの金属製品で採用されることが多い塗装方法です。



②頻繁な色替えや多品種少量生産では、段取り負担が大きくなる場合がある

粉体塗装で色を変更する場合、塗装ブース、ガン、ホース、回収装置などに残った粉体塗料を清掃する必要があります。前回の色が残っていると、異物混入や色ブレなどの不良につながる可能性があるため、色替え時の清掃や段取りには手間がかかります。



③複雑な形状では、膜厚が均一になりにくい場合がある

静電気を利用して塗料を付着させるため、「ファラデーケージ効果(静電反発)」と呼ばれる現象が起こります。箱型の内側の角や深くえぐられた溝など、入り組んだ部分に静電気が反発し、粉が入り込みにくくなります。複雑な形状の製品の場合、均一な膜厚を得るのが難しくなるケースがあります。



ファラデーケージ効果の解説図




粉体塗装が適しているケース・慎重に検討したいケース

粉体塗装を採用するかどうかは、「環境に良い」「耐久性が高い」といったメリットだけで判断するのではなく、被塗物の材質、形状、使用環境、ロット数、求める膜厚や外観品質などを総合的に確認することが重要です。粉体塗装の特性を踏まえて、適しているケースと慎重に検討したいケースを整理しました。



粉体塗装が適しているケース

・VOC削減や環境対応を進めたい
・耐久性・耐食性を重視したい
・屋外使用や長期使用を想定している
・厚みのある強い塗膜を形成したい
・同一色・同一仕様でまとまった数量がある
・塗料ロスや廃棄物を抑えたい



慎重に検討したいケース

・熱に弱い素材や部品が含まれている
・頻繁な色替えが発生する
・小ロット・多品種で段取り替えが多い
・数ミクロン単位の薄膜管理が必要
・奥まった凹部や複雑形状が多い
・色味・ツヤ・質感の細かな調整を重視したい





まとめ

粉体塗装は、環境への配慮と高い塗膜性能を両立した非常に優れた塗装技術です。しかし、熱による素材の制限や、複雑形状への対応力など、液体塗装とは異なる特性も持っています。

「とりあえず環境に良さそうだから」という理由だけで選ぶのではなく、自社製品の材質、形状、生産ロット、求められる機能などを総合的に判断し、最適な塗装工法を選択することが、品質向上とコスト最適化の鍵となります。





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