司ゴム電材株式会社 TSUKASA RUBBER&ELECTRIC MATERIALS CO.,LTD.

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2026.08.03 技術情報 製造技術

カチオン電着塗装の基礎知識|特徴と板金加工品への活用メリット

こんにちは。司ゴムの松川です。
今回は協力会社にて対応いただいている、カチオン電着塗装について紹介させていただきます。

カチオン電着塗装とは、通電を利用して塗料を被塗物に析出させる塗装です。複雑な形状の金属加工品に対しても高い防錆効果と均一な塗膜を実現する塗装方法です。被塗物(ワーク)を陰極(マイナス極)として塗料槽に浸漬し、直流電流を流すことで塗料粒子を電気的に引き寄せ、化学的に被覆・密着させます。

カチオン電着塗装の基本メカニズム

脱脂・化成処理

油分を除去し、リン酸亜鉛やジルコニウム皮膜などの密着下処理を形成。



電着槽での浸漬・通電

プラスに帯電したエポキシ系塗料粒子がマイナス極のワーク表面へ均一に付着。



UF水洗

未析出の塗料を超濾過(UF)水で洗い流し、回収槽へ復元(塗料ロスを抑制)。



焼付乾燥

160〜180℃程度の高温炉で加熱し、塗膜を加硫・硬化させて強固な皮膜を完成。





カチオン電着塗装のメリット

1. 圧倒的な防錆力と耐塩水性

エポキシ樹脂を主成分とし、陰極処理(カチオン)であるため金属素地の溶出が起きません。一般的なアニオン電着や溶剤系スプレー塗料に比べ、塩水噴霧試験で数百〜1,000時間以上の高い耐食性能を発揮します。


2. 優れた「つきまわり性」

電気の力で塗料が付着するため、電流が通る場所であればスプレーの手が届かないパイプの内面、折り返し加工部、溶接の隙間、袋構造の奥深くまで均一に塗膜が形成されます。この内面への膜の付きやすさ、回り込みやすさを「つきまわり性」と呼びます。これは電着塗料の基本性能を表す重要な管理パラメータの一つと言えます。


3. 塗膜厚の均一化とタレ・溜まりの防止

通電によって皮膜が形成されると、その部分の電気抵抗が上がって塗料が付きにくくなり、まだ付いていない部分へ電流が回る自律的な平滑化メカニズム(自己絶縁性)が働きます。そのため、端部(エッジ部)の薄膜化や液溜まり・タレが発生しにくくなります。


4. 高い塗料利用率と環境負荷の低減

水性塗料を使用しているためVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)の発散が少なく、消防法上の危険物管理リスクも軽減されます。また、UF水洗システムにより余分な塗料をほぼ100%回収・再利用できるため、塗料利用率は95%以上となります。





カチオン電着塗装のデメリット

1. 耐候性の低さ(紫外線に弱い)

主成分であるエポキシ樹脂は、太陽光(紫外線)に当たると劣化しやすく、屋外で長期間放置するとチョーキング(表面の粉ふきや白化)を起こします。屋外使用する製品では、上塗りとして粉体塗装(ポリエステル系)やウレタン焼付塗装等のトップコート処理が不可欠です。


2. 高額な初期投資と設備維持コスト

大型の電着槽、整流器、純水製造装置、UFろ過ユニット、大型焼付乾燥炉、および液質維持管理(pH、導電率、NV分調整)が必要となるため、少量多品種やスポット試作品の加工では単価が高くなりやすい傾向があります。


3. 色替えが非常に困難

数万〜数十万リットルにおよぶ塗料槽を一括管理するシステムであるため、ライン上で手軽に色を変更することができません。エポキシ樹脂はべっこう色をしているため、きれいな色が出ないので、ほとんどの会社では黒としています。別色に仕上げる場合は電着の上に上塗りを行う必要があります。


黒色のカチオン塗装を行っている所で白色も対応出来るのかといったところですが、対応は困難です。色替えとなると単純に塗料を全て入れ替えるという事が必要になってきます。


その後の回収槽、水洗槽でも液が混ざってしまう危険性がある為、すぐに対応は出来ません。新たにその色専用の電着ラインを新設する必要があります。


4. 前処理・通電上の制限

ワークの表面に油脂、重度のアニオン系防錆油、酸化皮膜(黒皮・黒皮スケール)が残っていると電着不良やピンホール(通電不良による微小穴)の原因となります。また、冶具(吊り具)の接点に塗膜が残っていると通電しないため、定期的な冶具剥離・メンテナンスが必要です。





カチオン電着塗装の主な用途

分野 対象部品・用途 採用理由
自動車・輸送機器 アンダーボディ、サスペンションアーム、ドアパネル、フレーム類 飛び石や泥水に晒される過酷な環境下での長期防錆を担保するため。
建築金物・設備機器 エレベーター筐体(カゴ)・乗場ドア下地、サッシ枠、空調室外機架台、エスカレーター部材 意匠性・耐候性が求められる表面には上塗りを行い、見えない構造部には下地防錆として機能させるため。
産業機械・電気制御 制御盤キャビネット内部、配電盤、建設機械フレーム、農業機械 溶接構造や折り曲げ部の隙間防錆、および均一な塗膜による組立精度の維持。
オフィス家具・日用品 スチールラック、事務机の脚部、ブラケット類、自動車用工具 薄膜で引っ掻きキズに強く、コスト効率の高い下地・仕上げ兼用のブラック塗装として。

精度や耐久性が求められる板金加工品において、屋外設置や美観重視の製品を作る場合は、「リン酸塩等による化成処理 + カチオン電着塗装(下地防錆) + 静電粉体塗装(意匠・耐候性トップコート)」の2コート仕上げが最も防錆寿命が長く、剥がれにくい仕様となります。





カチオン電着塗装・各種表面処理のご相談は当社にお任せください

司ゴムグループでは、精密板金や精密ユニット製品の製造とともに、高防錆・高密着なカチオン電着塗装までワンストップで対応しております。

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