- 2026.05.19 技術情報 製造技術
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ゴム材料が金型に及ぼす影響と金型の材質選定のポイント
ゴムにはそれぞれ特性があり、金型への影響も違います。主要な5種類のゴム材料が金型に及ぼす物理的・化学的な影響、および金型設計・製作時に配慮すべきポイントを解説いたします。
ゴム材料が金型に及ぼす影響
①NR(天然ゴム)
NRは高強度で弾性がありますが、未加硫状態でのタック性(自己粘着性)が強く、脱型の際に製品が金型に食いつきやすい傾向があるため、離型対策が重要です。
【影響と対策】
複雑形状だと脱型時に製品が千切れるリスクがあるため、抜き勾配を十分に確保し、金型表面を平滑に仕上げることで抵抗を最小限に抑えます。
②NBR(ニトリルゴム)
NBRは耐油性に優れる一方、配合される補強剤や添加剤が加工中に金型表面に焼き付く「金型汚染」が発生しやすい素材です。
【影響と対策】
汚れが蓄積すると、製品の寸法精度が落ち、表面の質感が損なわれるため、メンテナンス性の高い「入れ子構造」の採用や、離型性の良い表面処理(メッキやコーティング)を施します。
③Q(シリコーンゴム)
シリコーンは「水のように流れる」と言われるほど流動性が高いのが特徴です。
【影響と対策】
わずか0.005mm~0.01mmの隙間があってもバリが発生するため、金型の加工精度を極限まで高める必要があります。特にPLの平面度と、型締め時の剛性が重要になります。
④EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)
EPDMは耐候性に優れますが、高温成形時に配合剤が分解・析出しやすい性質があります。
【影響と対策】
析出した成分が金型のシボ目(梨地)を埋めてしまい、意匠性が失われるため、金型内の空気を逃がす「ガスベント」の通り道を広く、かつ清掃しやすい位置に設計します。
⑤CR(クロロプレンゴム)
CRは分子構造の中に「塩素」を含んでいます。加硫(加熱)の際、この塩素が水分と反応して塩化水素ガス(強酸性)を発生させます。
【影響と対策】
金型表面をミクロン単位で腐食させ、表面をザラザラにします。キャビティ内に溜まると製品の寸法不足や表面の肌荒れを引き起こすため、ステンレス鋼を使用し腐食を抑え、硬質クロムメッキまたはフッ素コーティング処理を行い、ガス、汚れの付着を最小限に抑える事が重要です。
⑥FKM(フッ素ゴム)
FKMは自動車や半導体分野で使われる高性能なゴムですが、金型にとっては最も過酷な素材です。
【影響と対策】
成形時に発生するフッ素系ガスが、金型を酸化させ、表面をボロボロに腐食させるため、S45C~55Cの炭素鋼やプリハードン鋼(NAK80など)やステンレス鋼、など耐食性を高めた鋼材を使用し、表面処理を行い、腐食を食い止め、離型性を向上させるのが鉄則です。ただし、ステンレス鋼は加工性が悪く、コストが高くなります。


《材料別》金型への影響と金型製作のポイント
金型を設計する際は、まず「どのゴムを打つか」で大きく変わります。特にシリコーンなら「隙間ゼロ」、フッ素ゴムなら「錆びない材質」というように、材料特性に合わせた「鋼材選定」と「加工精度の設定」が、金型の寿命と製品品質を左右します。
| ゴム材料 | 主な特徴と金型への影響 | 金型製作・管理のポイント |
|---|---|---|
| NR(天然ゴム) | 粘着性が高く、金型への貼り付きが起こりやすい | 離型性を高めるため、キャビティの鏡面仕上げが重要 |
| NBR(ニトリルゴム) | 金型への汚染(モールドデポジット)が比較的蓄積しやすい | 定期的な金型洗浄が必要。クロムメッキ処理が有効 |
| Q(シリコーンゴム) | 流動性が極めて高く、微細な隙間からバリが出やすい | PL(合わせ面)の超高精度な擦り合わせが必須 |
| EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム) | 配合剤(オイル等)が金型表面に染み出し、汚れになりやすい | ガス抜き(ベント)の配置を最適化し、汚れの蓄積を分散させる |
| CR(クロロプレンゴム) | 塩素ガスが発生し腐食の原因となる | SUS材使用、硬質クロムメッキやフッ素コーティング処理を行う |
| FKM(フッ素ゴム) | 成形時に腐食性ガス(フッ化水素)を発生させ、鋼材を傷める | 金型材にSUS材や特殊な耐食鋼を採用する |
金型の材質選定について
ゴム金型は、成形時の圧力(型締め圧・射出圧)に耐える「剛性」、成形を繰り返しても摩耗しない「硬度」、そして材料特性に合わせた「耐食性・離型性」の3要素のバランスで選定します。
1.ゴム金型に使用される主要な鋼材とその特徴(鉄の種類)
| 分類 | 代表的な鋼材(JIS規格等) | 特徴と用途 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | S45C, S50C | 安価で加工性が良い。試作型や、精度をそれほど求めない大型の型に使用 |
| プリハードン鋼 | NAK55, NAK80, P20 | HRC30~40程度に熱処理済み。加工後の変形が少なく、中~量産型に最適 |
| 冷間ダイス鋼 | SKD11, DC53 | 非常に硬く、耐摩耗性が高い。バリが出やすい部品や、高寿命が求められる量産型に適している |
| ステンレス系 | SUS420J2, HPM38 | フッ素ゴムなどの腐食性ガス対策に必須。錆びにくく鏡面性も高い |
| アルミ合金 | A7075(超々ジュラルミン) | 熱伝導率が高く成形サイクルを早められる。軽量だが強度は鋼に劣る |


2. ゴム材料の特性に応じた最適な金型材質の選び方
ゴムの「化学的性質」が選定の決め手になります。
FKM(フッ素ゴム)を使用する場合
成形時に発生するフッ素ガスが鋼材を腐食させます。推奨鋼材はSUS420J2(クエンチ焼き入れ)またはHPM38です。一般的な鋼材では数千ショットでキャビティ表面がザラつき、離型不良を起こすため、耐食ステンレス鋼は必須です。
Q(シリコーンゴム)を使用する場合
流動性が高いため、金型の合わせ面(PL面)の摩耗が許されません。推奨鋼材はSKD11またはNAK80です。高硬度材を使用することで、長期間使用してもPL面が潰れず、バリの発生を抑えられます。
高充填(フィラー入り)ゴムを使用する場合
シリカやカーボンブラックが高充填されたゴムは、金型を研磨剤のように削ります。推奨鋼材はSKD11(硬度HRC58以上)です。耐摩耗性を最優先し、金型の寿命を延ばします。
3.金型の性能を引き出す熱処理と表面処理
材質選びと同じくらい重要なのが、「熱処理」と「表面処理」です。
熱処理(焼き入れ)
SKD11などの素材は、加工後に焼き入れを行うことで本来の性能を発揮します。ただし、熱歪みが出るため、精密型では「荒加工→焼き入れ→仕上げ加工」という工程を踏みます。
表面処理(メッキ・コーティング)
・硬質クロムメッキ:離型性向上と防錆の定番
・無電解ニッケルメッキ:複雑形状の深部まで均一に被膜を作りたい場合に有効
・DLC(ダイヤモンドライクカーボン):摩擦係数を極限まで下げたい、または離型剤の使用を減らしたい場合に有効
4.金型の精度を安定させる構造部材(モールドベース)の選定
キャビティ(製品部)以外の型板などには、コストを抑えるためS50C等の炭素鋼を使用するのが一般的ですが、加熱・冷却を繰り返すゴム成形では、熱膨張による「型の反り」に注意が必要です。高精度が求められる場合は、ベース材にもプリハードン鋼を使用して安定性を高めます。
ゴム製品の品質は、金型で決まります。
ゴム製品の品質は、材料特性に応じた「鋼材の選定」と「加工精度」で決まります。フッ素ガスによる腐食やシリコーンゴムのバリ、高充填ゴムによる摩耗など、ゴム特有の影響を見極めた金型仕様(剛性・硬度・耐食性・離型性)が、不良低減とコスト削減に直結します。
司ゴムグループでは、3D CAD/CAMや流動解析シミュレーションを活用し、最適な成形方法の選定を通じて品質の向上と不良率の低減をサポートいたします。
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