司ゴム電材株式会社 TSUKASA RUBBER&ELECTRIC MATERIALS CO.,LTD.

NEWSニュース&トピックス

2026.08.28 技術情報 製造技術

焼付塗装とは?粉体塗装との違いや種類、メリット・デメリットを解説

金属製品の仕上げ方法を決めるとき、「自社製品に焼付塗装が合うのか」と迷う場面は少なくありません。塗装方法の選択は、製品の耐久性やコスト、納期に直結します。しかし調べ始めると、粉体塗装との境界が分かりにくかったり、塗料の種類が多くて絞り込めなかったりするものです。

本記事では、精密板金加工から各種塗装までを一貫して手がける当社が、焼付塗装の仕組みと用途、粉体塗装との違い、種類ごとの特徴、メリット・デメリットを解説します。

焼付塗装とは

焼付塗装の基本概念と仕組み

焼付塗装とは、塗料を塗った後に加熱し、塗膜を硬化させる塗装方法です。

塗料が固まる仕組みは、大きく2通りに分かれます。一般的な常温乾燥塗装(自然乾燥塗装)は、主に塗料に含まれる溶剤が空気中に抜けることで固まります。洗濯物が乾くのに近い仕組みです。


一方、焼付塗装では熱を加えることで、塗料の中の樹脂どうしが結びつきます。バラバラだった分子が網目状につながるため、乾かしただけの塗膜よりも硬く緻密になります。傷や錆に強くなるのは、この構造の違いによるものです。





加熱温度は、使用する塗料によって異なりますが、一般的には100〜170℃程度が目安です。例えば、焼付塗装で広く使われるメラミン系塗料の場合、JIS K 5651「アミノアルキド樹脂塗料」では、加熱乾燥性の条件を種類に応じて110±10℃〜140±10℃・25±5分と規定しています。低温焼付タイプであれば100℃前後から硬化させられる一方、中温焼付タイプのフッ素樹脂系では170℃前後を必要とします。


出典:
JIS K 5651 アミノアルキド樹脂塗料(日本規格協会)
デュフロンK300 製品説明書(日本ペイント・インダストリアルコーティングス)




塗装工程

塗料メーカーは、製品ごとに前処理から焼付までの推奨条件を製品説明書で公開しています。ここでは、鋼製家具や電気機器、配電盤、建材など幅広い金属製品に使われる焼付塗料の資料をもとに、代表的な工程をご紹介します。


出典:
エミーラック 1000番級 製品情報(ロックペイント)
デュフロンK300 製品説明書(日本ペイント・インダストリアルコーティングス)


どの工程も省略できませんが、なかでも仕上がりを左右するのが「1.前処理」と「4.セッティング」です。下地づくりが不十分だったり、焼付炉に入れるのが早すぎたりすると、塗膜の不具合につながります。







焼付塗装の主な用途

硬く傷つきにくい塗膜が得られるため、長期間の使用や過酷な環境が想定される金属製品に広く用いられています。


  • 電気設備

  • オフィス什器

代表的な用途としては、配電盤、照明器具、鋼製家具(ロッカー・デスク・パーテーションなど)、農機具、電動工具、医療機器、給湯機器、アルミニウム建材、ステンレス建材などが挙げられます。屋内の機器から屋外の建材まで、幅広い金属製品が対象です。




当社における焼付塗装の対応事例

当社、司ゴム電材においても、耐久性や美観が求められる金属製品への焼付塗装を承っております。当社の強みである「精密板金加工から各種塗装までの一貫生産体制」を活かし、以下のような製品・部品への塗装に対応しています。


  • エレベーター意匠部材

    三方枠、ドア、かご内パネル類
  • 各種筐体

    OA機器・医療機器・制御盤など


上記は代表的な対応例です。当社の強みは、塗装工程のみのご依頼に留まらず、板金加工の段階から塗装後の仕上がりを見据えた設計ができる点にあります。お客様の製品の材質や形状、ロット数に合わせた最適な塗装仕様のご提案はもちろん、品質・納期・コストのトータルでの最適化が可能です。


「自社製品に焼付塗装が適用できるか知りたい」「板金加工から塗装までまとめて委託したい」といったご要望がございましたら、お気軽にご相談ください。





焼付塗装と粉体塗装の違い

焼付塗装をご検討中のお客様から、よくいただくご質問の一つに「粉体塗装とは何が違うのか?」というものがあります。


焼付塗装も粉体塗装も、金属製品などに用いられる工業塗装です。どちらも塗装後に加熱して塗膜を形成・硬化させる点では共通しているため、違いが分かりにくいと感じる方も少なくありません。


工業塗装における『焼付塗装』とは、加熱硬化させる工法全般を指すため、厳密には粉体塗装も焼付塗装の一種です。


しかし、製造現場の慣例では『焼付塗装=液体(溶剤)塗料を用いた焼付』を指すことが多いため、本章では便宜上『粉体塗装』と『液体焼付塗装(溶剤焼付塗装)』という呼称で比較・解説します。




主な違いは以下の表をご確認ください。


比較項目 粉体塗装 液体焼付塗装(溶剤焼付塗装)
塗料の形態 粉末状の塗料を使用 液体塗料を使用
環境面 有機溶剤を基本的に使用せず、VOC排出を抑えやすい 有機溶剤を含むため、VOCや作業環境への配慮が必要
塗膜の特徴 厚膜にしやすく、耐久性・耐食性を高めやすい 薄膜でなめらかな仕上がりにしやすい
仕上がり・意匠性 厚みのある仕上がり。細かな色調整や薄膜仕上げは条件による 色・ツヤ・質感の調整がしやすい
向いている用途 耐久性・耐食性・環境配慮を重視する金属製品 美観・色味・薄膜仕上げを重視する金属製品
注意点・確認事項 素材・部品の耐熱性、膜厚、色替え条件などの確認が必要 有機溶剤の管理、乾燥・焼付条件、塗膜性能の確認が必要

※塗膜の厚み、焼付温度、仕上がり、耐久性・耐食性は、使用する塗料の種類、被塗物の材質・形状、前処理、塗装設備、要求される品質規格によって異なります。表中の内容は一般的な傾向を示したものです。




このように、粉体塗装と液体焼付塗装は、どちらも主に金属製品などに用いられる工業塗装ですが、塗料の形態や環境面、塗膜の特徴、仕上がりに違いがあります。


液体焼付塗装は、美観や色味の作り込み、薄膜仕上げを重視したい場合に有効な選択肢です。ただし製品の使用環境や求める耐久性、環境対応の優先度によっては、粉体塗装の方が適している場合もあります。粉体塗装の詳細は、別記事で解説しています。


参考:粉体塗装(パウダーコーティング)とは?焼付塗装との違いやメリット・デメリットを解説





焼付塗装の種類

焼付塗装は、使用する樹脂によって性能とコストが大きく変わります。代表的なものとして、メラミン・アクリル・ウレタン・エポキシ・フッ素の5種類が挙げられます。それぞれの特徴と主な用途を整理しました。


樹脂の種類 特徴 耐候性 コスト 主な用途
メラミン 平滑な仕上がり・紫外線に弱い 低め 低い 鋼製家具、屋内機器
アクリル 耐汚染性・耐薬品性に優れる 中〜高 中程度 農機具、電動工具、医療機器
ウレタン 密着性と柔軟性に優れる 中程度 中程度 複雑形状の部品
エポキシ 防錆性が高いが屋外は苦手 低め 中程度 下塗り、屋内機器
フッ素 長期の美観維持に適する 高い 高い アルミ・ステンレス建材

※表の特徴と主な用途は、各社の製品資料の記載に基づきます。また、塗膜の性能や適した用途は、被塗物の材質・形状、前処理、塗装設備、要求される品質規格によって異なります。表中の内容は一般的な傾向を示したものです。


出典:
エミーラック 1000番級
コーロック 100番級(ロックペイント)
デュフロンK300(日本ペイント・インダストリアルコーティングス)
塗料の種類(大日本塗料)
JIS K 5651 アミノアルキド樹脂塗料(日本規格協会)




耐候性やコストは、樹脂の種類だけで決まるわけではありません。同じ樹脂系でも、グレードによって性能に差があります。屋外で使う製品ほど、樹脂の種類とグレードの両方を確認することが大切です。


使用環境と求める耐用年数を先に決めてから、樹脂の種類とグレードを選ぶと、後戻りが起きにくくなります。メラミン焼付塗装については以下の記事でも紹介しています。興味があれば合わせてご覧ください。


参考:金属塗装に最適。メラミン焼付塗装のメカニズムと主な用途





焼付塗装のメリット・デメリット

焼付塗装は塗膜性能に優れる工法ですが、すべての製品に適しているわけではありません。自社製品に合った塗装方法を選ぶためにも、メリットと注意点をあわせて確認しておきましょう。


焼付塗装のメリット


硬く耐久性の高い塗膜が得られる

加熱によって樹脂が化学的に結合するため、常温乾燥塗装より硬い塗膜になります。傷や衝撃に強く、搬送時や使用中の外観劣化を抑えられます。



防錆性・密着性に優れる

緻密な塗膜が水分や酸素の侵入を防ぎます。前処理として化成処理を組み合わせることで、防錆性をさらに高められます。



複雑な形状にも塗料が届きやすい

液体塗料はエアスプレーなど静電気に頼らない方式でも塗装できるため、箱型の内側や凹部にも塗料を届けやすくなります。粉体塗装は静電気で粉を付着させる方式が中心で、被塗物の内面の塗装は困難とされています。この点は焼付塗装の強みです。


出典:粉体塗装の紹介 粉体塗装の範囲(日本パウダーコーティング協同組合)


量産時の品質が安定しやすい

焼付条件を温度と時間で管理できるため、気温や湿度の影響を受けにくくなります。同一仕様でまとまった数量を生産する際、色や光沢のばらつきを抑えられます。




焼付塗装のデメリット・注意点


専用の焼付炉が必要で、素材の耐熱性に制約がある

100〜170℃前後の加熱が前提となるため、熱に弱い樹脂部品やゴム、木材は対象外です。金属と樹脂が混在する製品では、塗装後に組み立てる工程設計が必要になります。



大型製品や現場施工には対応できない

塗装可能なサイズは焼付炉の大きさに制限されます。屋外の構造物など、現場で施工する対象には適していません。



有機溶剤を含むため、VOC対策が必要

VOC(揮発性有機化合物)は大気汚染防止法で排出規制の対象とされており、一定規模以上の塗装施設および塗装後の乾燥・焼付施設が「揮発性有機化合物排出施設」に定められています。


規模によっては規制の対象外ですが、事業者による自主的な排出抑制の取組もあわせて求められています。環境負荷の低減を最優先する場合は、粉体塗装や水性塗料も選択肢に入ります。


参考:揮発性有機化合物(VOC)の排出抑制(環境省)




塗料の種類ごとのVOC排出量については、以下の画像をご確認ください。


塗料の種類ごとのVOC排出量

出典:低VOC(代替)塗料の使用(環境省)


【用語解説】図表内の塗料分類について
粉体系:水や有機溶剤を含まない100%固形分の粉末塗料。
水系:水を主な溶媒・分散媒として使用する塗料。
ノンソル系:有機溶剤を使用しない、または揮発する溶剤分をほとんど含まない塗料。
ハイソリッド系:従来の溶剤系に比べて有機溶剤を減らし、固形分の割合を高めた塗料。
溶剤系:シンナーなどの有機溶剤を溶媒・希釈剤として使用する塗料。





焼付塗装が適しているケース・慎重に検討したいケース

焼付塗装を採用するかどうかは、被塗物の材質、形状、使用環境、ロット数、求める外観品質を総合的に確認することが重要です。焼付塗装の特性を踏まえて、適しているケースと慎重に検討したいケースを整理しました。



焼付塗装が適しているケース

・高い耐久性・防錆性・硬度が求められる金属製品である
・なめらかな塗膜や、色・ツヤの細かな調整を重視したい
・用途に応じて塗料を選び分けたい(屋内向け・屋外向けなど)
・入り組んだ形状や凹部まで均一に塗りたい
・同一仕様でまとまった数量を安定した品質で量産したい
・常温乾燥塗装では、求める耐久性や密着性が得られなかった



慎重に検討したいケース

・熱に弱い素材や部品が含まれている
・焼付炉に入らない大型製品、または現場施工が必要な構造物である
・VOC削減・環境対応を最優先したい
・厚膜による防食性と、屋外での耐久性を両立したい
・単品・極小ロットで、段取りや設備コストが見合わない


VOC削減や、厚膜による耐食性を重視する場合は、粉体塗装も有力な選択肢になります。判断に迷う場合は、お気軽にご相談ください。


参考:粉体塗装(パウダーコーティング)とは?焼付塗装との違いやメリット・デメリットを解説





まとめ

焼付塗装は、熱によって塗膜を硬化させる塗装方法です。硬く緻密な塗膜が得られるため、耐久性・防錆性が求められる金属製品に適しています。一方で、焼付炉が必要な点や、被塗物が耐熱素材に限られる点は避けられない制約です。


粉体塗装との比較でも、どちらが優れているかを一律に決めることはできません。自社製品の材質、形状、ロット数、求める品質を整理したうえで、最適な工法と塗料の種類を選ぶことが、品質向上とコスト最適化の鍵となります。





焼付塗装・各種塗装のご相談は当社にお任せください

司ゴムグループでは、精密板金や精密ユニット製品の製造とともに、意匠塗装(焼付塗装、粉体塗装、メラミン焼付塗装、ウレタン塗装など)までワンストップで対応しております。

「自社の製品にはどの塗装方法が合うのだろうか」
「品質を維持しつつ、コストや環境面で最適な塗装方法を知りたい」
といったお悩みやご要望はございませんか?

お客様の製品の材質(鉄・アルミなど)や形状、ロット数に合わせて、専門知識に基づく最適な提案をいたします。

板金加工の段階から塗装時の仕上がりを見据えたトータルでの品質・納期・コストの最適化はもちろん、管理工数の削減まで強力にサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせはこちら