司ゴム電材株式会社 TSUKASA RUBBER&ELECTRIC MATERIALS CO.,LTD.

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2026.11.02 技術情報 製造技術

電着塗装とは?カチオン塗装との違いやメリット・デメリットをわかりやすく解説

金属製品の防錆対策を検討する際、選択肢の一つとなるのが「電着塗装」です。自動車の車体や産業機械の部品などに幅広く採用されていますが、「一般的な塗装と何が違うのか」「カチオン塗装とは別の工法なのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

電着塗装は、複雑な形状にも塗膜を形成しやすく、防錆性や量産性に優れた塗装方法です。一方で、製品の材質や形状、生産数量によっては適さない場合もあります。

本記事では、精密板金加工から各種塗装までを手がける司ゴム電材が、電着塗装の仕組みやカチオン塗装との違い、主な用途、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。

電着塗装とは

電着塗装とは、導電性のある製品を水系の電着塗料が入った槽に浸し、電気の力を利用して表面に塗膜を形成する塗装方法です。一般的なスプレー塗装が製品の外側から塗料を吹き付けるのに対し、電着塗装は製品全体を塗料槽に浸して通電することで塗膜を形成します。そのため、スプレーでは塗料が届きにくい凹凸部分や複雑な形状にも、比較的均一な塗膜を形成できることが特徴です。金属製品の防錆を目的とした下塗りとして広く利用され、自動車や産業機械など、耐久性が求められる製品で採用されています。




電着塗装の仕組みと工程

電着塗装は、塗料中に分散している樹脂粒子が電気化学反応によって製品表面に析出する仕組みを利用しています。一般的な金属製品への電着塗装は、次の4つの工程で行われます。


電着塗装の基本工程(前処理・電着・水洗・焼付)

1.前処理(脱脂・化成処理)

製品表面の油分や汚れを取り除き、必要に応じて化成処理を行います。塗料の密着性や防錆性能に関わる重要な工程です。


2.電着

製品を電着塗料の入った槽に浸し、直流電流を流します。電気化学反応によって塗料の樹脂成分が製品表面に析出し、塗膜を形成します。


3.水洗

製品表面に付着した余分な塗料を洗い流します。UF(限外ろ過)システムを利用することで、未析出の塗料を回収し、塗料ロスを抑えることができます。


4.焼付

塗装した製品を加熱し、塗膜を硬化させます。これにより、密着性や耐久性を備えた塗膜が完成します。必要な温度や時間は塗料の種類によって異なります。


このように、電着塗装は単に塗料を付着させるだけでなく、前処理から焼付までの各工程を適切に管理することで、安定した塗装品質を実現しています。




カチオン電着塗装とアニオン電着塗装の違い

電着塗装には、大きく分けて「カチオン電着塗装」と「アニオン電着塗装」の2種類があります。一般に「カチオン塗装」と呼ばれるものはカチオン電着塗装を指すことが多く、カチオン電着塗装は電着塗装の一種です。

両者の主な違いは、塗装する製品の電極の極性と、使用する塗料の性質にあります。




カチオン電着塗装とアニオン電着塗装の違い



カチオン電着塗装は、特に鉄鋼製品の防錆用途で広く採用されています。耐食性に優れた塗料システムが普及しており、自動車の車体などにも利用されています。

一方、アニオン電着塗装は、アルミニウム建材やサッシなどの表面仕上げにも用いられています。ただし、実際の防錆性能は塗料の種類や前処理、膜厚などにも左右されるため、用途に応じた選定が必要です。





電着塗装の主な用途

電着塗装は、防錆性や塗膜の均一性が求められる金属製品を中心に、幅広い分野で使用されています。代表的な用途は次のとおりです。


分野 主な用途 採用される理由
自動車 車体・フレーム・足回り部品 複雑な構造への塗装・防錆
産業機械 機械部品・フレーム・金属カバー 塗膜の均一性・耐食性
板金製品 筐体・ブラケット・各種金属部品 折り曲げ部や凹部の防錆
建築・建材 アルミサッシ・アルミ建材 表面保護・仕上がり品質




なかでも代表的なのが自動車の塗装です。自動車の車体は、多数の金属部品が組み合わされた複雑な構造をしています。スプレー塗装では塗料が届きにくい内部や隙間にも防錆処理が必要になるため、電着塗装が下塗り工程として利用されています。

また、電着塗装は鉄だけでなく、アルミニウム製品にも利用されています。例えば、アルミサッシなどの建材では、陽極酸化処理と電着塗装を組み合わせた表面仕上げが行われています。ただし、材質や表面状態によって適切な前処理・塗装方式が異なるため、アルミニウム製品への採用時には仕様の確認が必要です。




当社における電着塗装の対応事例

司ゴム電材では、精密板金加工や各種金属製品の製造に加え、電着塗装にも対応しています。


  • 自動車部品

    カチオン電着塗装を施した金属部品


上記は代表的な対応例です。当社の強みは、塗装工程だけでなく、板金加工から表面処理までを含めてご相談いただけることです。例えば、折り曲げ部分や溶接箇所を持つ板金製品では、完成後の形状によって塗装のしやすさや膜厚に違いが生じる場合があります。そのため、製品の材質や形状、求められる防錆性能などを踏まえ、適切な加工方法や塗装仕様を検討することが重要です。

当社では、こうした製品ごとの条件を確認しながら、品質・コスト・納期のバランスを考慮したものづくりをサポートしています。「自社製品に電着塗装が適用できるか知りたい」「板金加工から表面処理までまとめて依頼したい」といったご要望がございましたら、お気軽にご相談ください。





電着塗装のメリット・デメリット

電着塗装は、防錆性や量産性に優れた塗装方法ですが、すべての製品に適しているわけではありません。ここでは、採用を検討する際に知っておきたいメリットとデメリットを紹介します。





電着塗装のメリット


①防錆性に優れている

特にカチオン電着塗装は、高い防錆性能が求められる金属製品に適しています。適切な前処理と組み合わせることで、金属表面を塗膜で保護し、錆の発生や進行を抑えることができます。



②複雑な形状や内面まで塗装しやすい

電着塗装には、塗料が凹部や内部まで回り込みやすい「つきまわり性」という特徴があります。パイプの内面や箱状構造物の内部など、スプレー塗装では塗料が届きにくい部分にも塗膜を形成しやすく、防錆性能の確保につながります。ただし、内部の形状や通電条件によっては、十分な塗膜を形成できない場合もあります。



③膜厚を均一にしやすい

電着塗装では、塗膜が形成された部分の電気抵抗が高まり、まだ塗膜が薄い部分へも電流が回りやすくなります。この性質によって膜厚のばらつきを抑えやすく、安定した塗装品質が期待できます。ただし、製品形状や塗装条件によって膜厚には差が生じます。



④量産に適している

電着塗装は工程を自動化しやすく、同一仕様の製品を大量に処理する用途に適しています。また、UFシステムなどによって塗料を回収・再利用できるため、塗料ロスの削減も期待できます。安定した品質で継続的に生産したい場合に有効な工法です。





電着塗装のデメリット・注意点


①導電性のある素材が前提となる

電着塗装は電気を利用するため、基本的に導電性のある素材が対象です。鉄やアルミニウムなどの金属製品には利用できますが、一般的なゴムや樹脂などの絶縁性材料には、そのままでは適用できません。非金属材料に電着塗装を行う場合は、表面に導電性を付与する処理などが必要になります。



②設備や製品サイズに制約がある

電着塗装には、塗料槽や通電設備、水洗設備、焼付炉などが必要です。そのため、製品の大きさや形状によっては設備に収まらず、対応できない場合があります。また、焼付工程を伴うため、熱に弱い素材や部品を含む製品には注意が必要です。



③色替えや小ロット対応が難しい場合がある

電着塗装には専用の塗料槽や洗浄設備などが必要であり、塗料や設備の管理が重要になります。そのため、頻繁な色替えや少量多品種の生産では、依頼先の設備や生産体制によって対応できる条件が異なります。希望する色やロット数によっては、対応可能な塗装方法や費用、納期などを事前に確認しておくことが大切です。



④塗膜が傷つくと錆が発生する可能性がある

カチオン電着塗装は防錆性に優れていますが、塗装すれば絶対に錆びないというわけではありません。塗膜の傷や欠陥によって金属素地が露出した場合や、湿気・塩分などの影響を受ける環境では、腐食が進行する可能性があります。そのため、使用環境や必要な耐久性に応じて、前処理や膜厚、上塗りの必要性まで検討することが重要です。





電着塗装を依頼する際のポイント

電着塗装を依頼する際は、製品の材質や形状だけでなく、使用環境や求める性能、生産数量などを事前に整理しておくことが大切です。特に確認しておきたいのは、材質、製品寸法、形状、ロット数、屋内・屋外などの使用環境、必要な防錆性能です。これらの条件によって、電着塗装が適しているか、ほかの塗装方法を検討すべきかが変わります。



電着塗装が適しているケース

電着塗装は、防錆性能が重要で、複雑な形状を持つ金属製品や、まとまった数量を継続生産する製品に適しています。例えば、折り曲げ加工や溶接によって複雑な形状になった板金部品、内部まで防錆処理が必要な金属製品などが挙げられます。また、同一仕様の部品を一定数量以上生産する場合は、工程の自動化による品質の安定や生産効率の向上も期待できます。ただし、実際に塗装できる範囲は、製品形状や設備条件などによって異なるため、事前の確認が必要です。



慎重に検討したいケース

一方で、焼付時の熱に耐えられない部品を含む製品や、塗料槽に収まらない大型製品、頻繁な色替えが必要な製品などでは、別工法の検討が必要になる場合があります。また、小ロットの試作品や、外観の色・質感を細かく指定したい製品では、粉体塗装や液体焼付塗装なども選択肢となります。

ただし、いずれの工法にも設備や塗料の種類による制約があるため、製品の材質・形状・数量・仕上がりの要求に応じて検討することが重要です。大切なのは、製品に求められる性能と製造条件を整理し、それぞれの塗装方法の特徴を踏まえて選ぶことです。





まとめ

電着塗装は、電気の力を利用して金属製品の表面に塗膜を形成する塗装方法です。特にカチオン電着塗装は防錆性に優れ、複雑な形状や内面への塗装、量産品の品質安定などに適しています。

一方で、素材の導電性や製品サイズ、焼付条件、ロット数などによる制約もあるため、すべての製品に最適な工法というわけではありません。製品の使用環境や要求性能を踏まえ、適切な塗装方法を選定することが、品質向上とコストの最適化につながります。



出典・参考文献

・大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について(環境省)

・電着塗装の歴史と原理(第3.1~3.3節)(表面技術協会誌)

・アニオン電着塗装(公益社団法人 自動車技術会)

・鉛フリーカチオン電着塗料(公益社団法人 自動車技術会)

・アルミ形材の色調の違い(一般社団法人 日本サッシ協会)

・アルミ建材向け電着塗装(一般社団法人 色材協会)

・高耐熱絶縁電着塗料の塗膜形成制御技術(153ページ・表1)(一般社団法人 表面技術協会)

・住宅環境に長期暴露したPbフリーカチオン電着塗装鋼板の腐食挙動(腐食防食学会『材料と環境』)

・粉体塗装の特徴と利点・欠点(日本パウダーコーティング協同組合)




電着塗装・各種表面処理は司ゴム電材にお任せください

司ゴムグループでは、精密板金や精密ユニット製品の製造に加え、協力会社との連携によるカチオン電着塗装など、各種表面処理に対応しています。

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